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東京大学 理学部 物理学科・大学院理学系研究科 物理学専攻 原子核理論

研究紹介

研究背景

陽子と中性子から構成される原子核は, 物質の階層性の中の一つの位置を占めます. ニホニウム (113番元素) でも知られるように, 日本は原子核物理を牽引する国の一つです.

  • この宇宙にはいくつの異なる原子核が存在するのか?
  • どこで, どのように原子核は作られたのか?
  • どのように原子核を安全に用いれば良いのか?
などのような疑問は, 原子核の性質を知る上で重要なモチベーションです.

原子核は, 有限で開いた系としての量子多体問題であるため, 原子核理論の研究は簡単ではありません. 更に, 原子核では, 4つの基本的な力のうち, 強い力, 弱い力, 電磁気力がお互いに影響を及ぼしあって, 独立粒子的な性質と集団的な性質が共存しています.

このようなユニークな性質があるため, 微視的な原子核構造論研究が, 湯川秀樹 (1949年ノーベル物理学賞) の頃からの長い歴史があるにも関わらず, 多くの問題を残しています.

最近の研究テーマ

基本的なアイディア

ここ数十年の量子多体問題研究の著しい進展と世界中での計算資源の増加によって, ab initio 計算, クラスター理論, 殻模型, 密度汎関数理論 (DFT) など, 微視的な原子核理論は徐々に確立してきました.

我々のグループの主な研究テーマは, 原子核密度汎関数理論です. 原子核密度汎関数理論は, 数千もある原子核の基底状態と励起状態の双方の性質が系統的に予測可能なだけでなく, 多くの微視的な原子核構造に用いることのできる理論の中で, 原子核密度汎関数理論だけが, 核図表中のほぼすべての原子核に適用可能です.

ここ3年間の研究テーマ

より詳しい情報は, 論文一覧をご覧ください.

将来の展望

中期的な目標: Ab initio 原子核密度汎関数理論

我々の目標の一つは, 現実的核力 (真空中の核力) からはじめる ab initio 原子核密度汎関数理論を構築することです. 場の量子論的な考え方も導入することで, 右図のように

  1. エネルギー汎関数は有効作用のルジャンドル変換で導かれる
  2. 核力の非摂動的な性質はフロー方程式を用いたくりこみ群の手法を用いることで取り扱い可能になる
  3. 理論的な不定性は, 有効場の理論のアイディアを使うことで評価可能になる
と考えています.

EDF

長期的な目標: 多体トンネル効果を微視的に理解する

多体トンネル効果の性質に本質的に依存する核分裂や核融合は, 原子核物理の中では最難関の問題の一つとして長年認識されています. 関連する研究は, 原子核物理だけでなくて, 天体中における元素合成や原子炉によって生成される長寿命核廃棄物の処理などの研究にも重要になってきます.

現代的な場の量子論や機械学習, 量子コンピュータはこれらの研究に役に立つのでしょうか? これらの疑問に一緒に取り組んでみませんか?